残された父親は、息子の遺品を見つめながら声を絞り出した。「熱かったやろ」。

京都アニメーションの放火殺人事件で、女子高生の日常を描いたアニメ「らき☆すた」で監督を務め、「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」などを手掛けた武本康弘さん(47)が2日、犠牲者の1人と発表された。兵庫県赤穂市に住む70代の父親は2日までの取材に胸中を明かした。

「これは燃えずに残った。だいぶ時間がたったが、焦げ臭いにおいがする」。すすけた白い猫のキーホルダー。「武本さんが身に着けていた」として京都府警から父親が受け取った。財布など見つかっていない所持品もある中で、猫好きだった息子の形見になった。

京都市伏見区京アニ第1スタジオが炎に包まれた7月18日の事件直後は「東京へ出張していればいいが」と切に願った。だが連絡が取れず、厳しい状況だと悟った。犠牲者の身元を確認するDNA型鑑定に協力し、約1週間後に府警から「遺体を引き取りに来てほしい」と要請があった。

武本さんは第1スタジオ3階で作業していたとされる。放火されてから数秒で吹き抜けのらせん階段に黒煙が立ち上ったようだと府警から聞いた父親は「意識が混濁して火にまかれたんだろう」と話す。ひつぎに収められた遺体の顔は見ない方がいいと考え、布の上から触ってお別れすることしかできなかった。

高校では昼休みによく漫画を描いていたという武本さん。アニメの道を志した息子を、中華料理店を営んでいた父親は「好きなことをやればいい」と送り出した。武本さんは両親に映画作品の招待券をプレゼントすることを欠かさなかった。

武本さんには小学校低学年の娘がいる。「お父さんはいつ帰ってくるの」と尋ねられても、家族は「今は病院だから」と答えるしかなかった。だが通夜や告別式が営まれるうちに、もう帰ってこないことを理解したようだという。精神的なショックからか、娘は1人でトイレに行けなくなった。

「今は犯人に対して思いが行かない」。父親は静かに話し、うつむいた。「息子の亡くなった状況にばかり意識が行く。熱かったやろ。痛かったやろ。苦しかったやろ。かわいそうでね。そればっかり」(共同)

 

京アニ放火「熱かったやろ」武本さん父が胸中語る - 社会 : 日刊スポーツ
https://www.nikkansports.com/general/news/201908020001048.html

 

 

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大相撲の土俵で豪快にまかれる塩=エディオンアリーナ大阪
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大相撲の土俵で豪快にまかれる塩=エディオンアリーナ大阪
土俵で塩をまく芦屋市出身の貴景勝。10日から始まる春場所では「赤穂の天塩」が使われる=2017年3月、エディオンアリーナ大阪
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土俵で塩をまく芦屋市出身の貴景勝。10日から始まる春場所では「赤穂の天塩」が使われる=2017年3月、エディオンアリーナ大阪

 10日に初日を迎える大相撲春場所エディオンアリーナ大阪)で土俵にまく塩に、赤穂化成(赤穂市)がつくる「赤穂の天塩(あましお)」が採用された。大相撲での採用は1971年設立の同社にとって初めて。

 春場所中に用いる塩は約650~700キロ。赤穂化成が無償で供出する。次回以降の本場所で使われるかどうかは未定という。

 日本相撲協会によると、力士が塩をまく動作には土俵を清める目的があり、古くは幕末の文献にも塩をまいた記録が残っている。

 現在、年6回の本場所のうち、3回の東京場所は伯方(はかた)塩業(愛媛県)の「伯方の塩」が1987年から使われ、残りの大阪と名古屋、福岡の各場所は銘柄が決まっていなかった。

 「赤穂の天塩」は、オーストラリア西海岸の塩田でつくった原塩とにがりを三井物産から仕入れ、赤穂化成が本社工場で混合して製塩している。赤穂化成は江戸時代以来の塩づくりをルーツとしており、「天塩」もミネラル成分のにがりを多く含んだ伝統の成分配合を再現する。まろやかな味わいが特長といい、池上良成社長は「大相撲との関わりを通じて、塩づくりへの強い思い入れが多くの方に伝われば」と話している。(長尾亮太)