【9月10日 AFP】英国の天体物理学者スティーヴン・ ホーキング(Stephen Hawking)博士(66)は9日、まもなく行われる巨大粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器LHC)」の実験について、「ヒッグス粒子は見つからないだろう。100ドル(約1万円)賭けてもいい」と語った。
 


LHC実験で「神の素粒子」発見を目指す

 スイスにある欧州合同素粒子原子核研究機構(European Organisation for Nuclear ResearchCERN)は、ヒッグス粒子を発見することを目標に、10日にLHCを稼働させる。実験では、水素の原子核である陽子をほぼ光速まで加速させて衝突させる。 

 素粒子が質量を獲得するメカニズムは長年謎とされてきたが、1964年に英物理学者のピーター・ヒッグスPeter Higgs)がその謎を解く理論として「ヒッグス場」を提唱した。ヒッグス場とは理論上、素粒子に質量を与える場だ。仮説では、素粒子ヒッグス粒子に当たって抵抗が生じることにより質量が生じる。ヒッグス粒子はどこにでも存在するものの目には見えないため、「神の素粒子」と呼ばれることもある。

■予想外の粒子が発見される可能性も

 今回の実験について、1988年の著書『ホーキング、宇宙を語る-ビッグバンからブラックホールまで』(原題 A Brief History Of Time)で知られるホーキング博士BBCラジオに対し、「実験では量子反応を観測できるよう高いエネルギーが生成されるため、ヒッグス粒子を発見するには充分だと考えられている。しかしわたしは、ヒッグス粒子を発見できなかったときの方がはるかにエキサイティングだと思う。つまり、何かが間違っていたということであり、考え直す必要があるということだ。ヒッグス粒子が見つからない方に100ドル賭けてもいい」と語った。

 だが、一部の科学者は博士よりも楽観的だ。フランスの天体物理学者、Hubert Reeves氏は、スイスのル・マタン(Le Matin)紙に対し、「LHC素粒子物理学の世界を永遠に変えることになる『予想外の結果』をもたらすだろう」と期待を寄せている。

 一方、ホーキング博士は、実験で既知の素粒子の「超対称パートナー」となる超対称粒子が発見される可能性も指摘している。超対称粒子は銀河同士を保持する謎の暗黒物質ダークマター)を生成している可能性があり、この発見はひも理論を裏付けるものでもある。「LHCで何が発見されても、あるいは発見されなかった場合でも、宇宙の構造について多くの手掛かりを与えてくれるだろう」と博士は締めくくった。(c)AFP