民放各局が10月改編の発表を終えた。健康番組などこれまでの中高年シフトとは一線を画し、各局の新番組は“コア層”と呼ばれるファミリー層、若者層を意識したラインアップとなった。高齢者相手に視聴率をとっても「スポンサーのニーズはそこにはない」というここ数年の事情が、タイムテーブルに表れてきた形だ。「世帯視聴率をとるために高齢者向けの番組を作るつもりはない」(フジテレビ)と、脱中高年シフトを宣言する局も出てきた。

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私たちが普段目にしている視聴率は、世帯視聴率のこと。誰が、ではなく、各世帯がどの番組を見ているかをビデオリサーチ社が計測したもので、テレビ局が「最高視聴率○%を記録!」「今期連ドラ1位!」などと発表している数字はすべてこの世帯視聴率だ。

今や夜帯にテレビを見ている人の約7割が50歳以上といわれる時代。世帯視聴率を上げるには60代、70代あたりにウケる番組を作るのがセオリーで、結果的に中高年タレント多数出演の健康番組が量産されてきた。しかし、民放の中堅営業マンは「スポンサーはもう健康番組を望んでいない」。数字の大半がモノを買わない高齢者層であるのは魅力薄で「スポンサーのニーズはもはや世帯視聴率にはない」というのが現状だったりする。

そこで存在感が増してきたのが「コアターゲット」「ファミリーコア」などと呼ばれる若い層の視聴率だ。消費の中心であるファミリー層と、ブームを作る若者層。スポンサーが注目するこの層の視聴率をテレビ局が独自に合算したものだ。日テレは13歳~49歳、TBSは13歳~59歳など、どの年齢をコアとするかは局によってまちまち。もともと内輪の営業用語でしかなかったが、最近は改編説明会の配布資料にも記されるほど存在感を増してきた。

ちなみに「ヒルナンデス!」や「水曜日のダウンタウン」など、劇的な視聴率をとらなくてもしっかり続いているタイプの番組は、このコア視聴率が非常に高く、セールス好調なのがポイントとされる。逆に、高齢者相手にちゃんと数字をとっている番組のスタッフにとっては「コア層が低い」と責められてしんどい時代だ。「けんかになるので世帯視聴率とコア視聴率の両方を社内表彰している局もある」(中堅営業マン)という話もあり、過渡期ならではの光景だ。

各局の改編説明会を振り返ると、その流れに1歩踏み込んだのがフジテレビ。斎藤翼編成部長が冒頭で「世帯視聴率をとるために、高齢者向けの番組を作るつもりはない」と語った。営業から来た編成部長という、コア戦略を象徴する人事も話題になっている。「高齢者層向けに番組を作れば手堅く7~8%はとれるが、そうはしたくない。『動脈硬化』や『遺産相続』がテーマでは、若い人は見ない」と明快だ。

斎藤氏は「いい番組とは、家族みんなで見てもらえるもの。それはスポンサーの意図とも重なる。営業出身の戦い方として、オールターゲットで2ケタをとれる番組に青臭くチャレンジしたい」。「イッテQ」のような看板番組を目指し、10月から金曜7時枠に目玉バラエティー坂上どうぶつ王国」をスタートさせる。坂上忍をMCに、土地を買うところからどうぶつ王国作りを始める企画で、「夢とロマンを伝えていきたい」としている。

前回の4月改編で本格的に「ファミリーコア重視」を打ち出したTBSは、若者層を中心に結果が出ているという。編成部の石丸彰彦企画総括は「マスコミは勢いのあるブームを仕掛けていかなければならないし、スポンサーもそれを望んでいる」。若者に人気の「東大王」を10月から水曜7時枠に移動し、「水曜日のダウンタウン」までコア層の縦の流れを作った編成も、ファミリーコア戦略の一環だ。

独特な中高年シフトをとってきたテレビ朝日も、今回の改編では、日曜の新番組「ナニコレ珍百景」(午後6時半)「ポツンと一軒家」(午後7時58分)を軸に「ファミリー」というキーワードを連発した。西新総合編成局長は「価値観がバラバラで最大公約数を見つけるのが難しくなっているからこそ、いろいろな世代が集まって画面を共有できるテレビの特徴を大事にしたい」と話す。

04年に最初にコアターゲット戦略を打ち出した日テレも「戦略を堅持」(岡部智洋編成部長)。内村光良サンドウィッチマンで「お茶の間」を意識した新番組「THE突破ファイル」(10月25日スタート、木曜午後7時)をスタートさせる。新井秀和プロデューサーは「T層(10代)がたくさんいるところで、なるほどね、という楽しさをお茶の間で味わえる番組にしたい」と、コアのど真ん中をねらっている。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)